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現在、アメリカを含む各国の債券市場では、サブプライムなどリスクの高い仕組債市場から国債市場に資金が流れ込む「質への逃避」が起きている。 つまり、実際は海外投資家のドル離れが起きていても、米国国内投資家がサブプライム関連商品など他のリスク・アセットから国債市場に資金を移しているため、根底で起きている海外投資家のドル離れが長期金利に反映されにくくなっているのである。
実際に同様の現象は、1987年10月のブラックマンデーの時も観察されている。 当時も海外投資家のドル逃避が発生、ドルは急落したが、米国内では暴落中の株式市場から資金が債券市場に流入したため長期金利は上がるどころか下がったのである。
かもしれない。 だがマクロ的に一定の通貨に対する需要は大きく変わってくる。
まずアメリカはこれまですさまじく大きな貿易赤字を出しているが、石油だけはドル建てで取引されているので、自国通貨で支払いができた。 言わば、それは国内取引と同じだったのである。
一方、世界の他の諸国は石油がドル表示になっているため、例えば日本は為替市場で円を売りドルを買って、そのドルで石油を買っている。 ヨーロッパも同様に、ユーロを売ってドルをドル危機に世界はどう対処すべきか買い、そのドルで石油を買っている。
ということは、石油がドル建てだったということでかなりのドル買い需要が発生していたのである。 仮に石油がユーロ表示になったら、ユーロの売られる額は大きく減少し、他方ドルの売の様相は一変する。

アメリカは巨大な貿易赤字国だから国内にユーロはないし、稼いでもいない。 そうするとアメリカは、今度は巨額のドルを売ってユーロを買い、そのユーロで石油を買わなければならなくなる。
日本もドルを買うのをやめ、ユーロを買わなければならなくなる。 その一方に減って、ユーロに対する需要は大幅に増えるから、そんな事態になれば、ドルは基軸通貨としてはもはや存在できなくなるだろう。
そうなれば、「そんなドルを持っていられるか」ということになり、そこからまさにドル暴落のシナリオが出て来かねないのである。 IMFの文書のなかには、「対ドルでアジアと産油国の通貨を切り上げなければいけない」と記されていた。
産油国は石油を売って世界をインフレにしているのに、なぜ彼らが通貨を切り上げなければいけないのかと疑問に思うかもしれないが、実はいま産油国もすごいインフレに襲われているのである。 最近、私もドバイに行って驚いたのだが、サウジ・アラビアもクウェートも8%、9%といった高率のインフレに苦しんでいる。
なぜインフレなのかと言えば、原油高による景気の良さに加え、中近東の産油国はヨーロッパから大量に輸入しているからである。 そのため、彼らはユーロの高騰から「輸入インフレ」に襲われているのである。
そこでIMFは産油国に通貨切り上げを勧告したのである。 すでにクウェートはドル・ベッグを外して通貨バスケット(複数の外貨と連動した変動相場制)に移行して自国通貨を対ドルで切り上げたし、他にも20O7年末にバーレーンが同様にドル・ベッグから通貨バスケットに移行している。
この程度の流れであれば、たいした問題ではないとも言えるが、この流れがサウジ・アラビアにまで波及すると事態は深刻になってくる。 というのも、今ドルがこれだけ下がっているにもかかわらず、石油のドル表示が維持されているのはサウジ・アラビアが自国通貨リアルをドル・ペッグしていることが非常に大きな要素になっているからである。
産油国のなかでも巨大な存在であるサウジ・アラビアがドル・ペッグしているから、石油はドル表示で取引されているのである。 同国はドル・ペツグしているために、インフレは昂進し続けている。

IMFも同国の通貨の切り上げを要請しているし、周辺諸国もドル・ペッグをやめ始めているなかで、サウジ・アラビアのなかでもすでに、「ドル・ベツグはもう維持できない」という声が出始めてドル危機に世界はどう対処すべきかいる。 サウジ・アラビアがクウェートのように通貨バスケットに移行したら、石油のドル表示という戦後経済の一つの重要な礎が消滅の危機に直面する。
最大産油国のサウジが石油をドルで売る理由がなくなってしまうからだ。 サウジ・アラビアのドル・ペツグと石油のドル表示は必ずしも機械的につながっているわけではない。
世界は、この11つは非常に緊密な関係にあると見ている。 だから、ここ数カ月、「フィナンシヤル・タイムズ」以下、最近は「N新聞」までサウジ・アラビアへ行って、「やめる」と言い出したら、市場は「石油」と「ドル」の関係が切られるだろうという連想に走り、その時点でユーロは急騰、ドルは急落しかねないからだ。
ましてやサウジ・アラビアが自国通貨をユーロとベッグすると言い出したら、石油はユーロアメリカのドルは大暴落シナリオに直面するだろう。 実は、私はニューヨーク連銀の為替デスクにいたころ、70年代末に実際に発生した「石油のドル表示危機」に関する説明を受けたことがある。
第2次オイルショックがあった1978〜79年はカーター政権の時代で、アメリカ国内はカが支持するイスラエルと戦争していたので、彼らは「ドルは急落中で、アメリカは2桁のインフレ。 しかも敵国を支持するアメリカの通貨で、なぜ俺たちは石油を売らなければいけないのか。
もうドル表示はやめようではないか」と言い出したのである。 当時はユーロがなかった時代なので、SDR(IMF加盟国の特別資金引出権)建てに替えようとした。
SDRはIMFの通貨であり、その価値は通貨バスケットで決まっている。 ドルはそのなかで半分程度のシェアを占めていたが、それ以外は他国の通貨である。
アラブの産油国がこういう検討を始めたという情報を入手したアメリカは、パニックに陥った。 石油のドル表示が中止になれば、ドルの基軸通貨としての価値は激減し、それはドル暴落という事態にも発展しかねなかったからだ。

「とにかくドル防衛だ」という話になり、当時の治」となっていたが、実際には「ドルの防衛」と「石油のドル表示の防衛」が重要な狙いだったのである。 たからである。
彼らの調達金利が22%まで上昇したのに、彼らの貸し出しは10%強でしか回らない3O年固定金利の住宅ローンだけであったため、とんでもない逆ざやが発生してしまったのである。 この時、米国には6OOO行のS&Lがあったが、当然のことながら全行が実質債務超過になってしまった。
その後、FRBと財務省はS&Lの問題で救済策を出すことになったが、逆に言うとアメリカは、建設業界とS&Lをすべて潰してもいいから「ドル」と「石油のドル表示」を守らなければいけないという決断を下したのである。 アメリカのこの強い意志を見たアラブの産油国は今でも多くの人は当時のことを覚えている。
だからこそ、O8年2月の議会証言の時にアメリカの議員がバーナンキに対して、「あなたはドルを歓迎するようなことを言っているが、石油とドルの連結が切れたらどうするのか」と質問を投げかけたのである。 1970年代のアメリカの貿易赤字は今と比べると微々たるものであり、ユーロという強力なライバルも存在しなかった。
今回は当時の約3O倍という貿易赤字を抱え、しかもユーロというライバルが存在している。

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